近藤彩さんを偲んで

昨夜、めずらしく私の携帯電話が鳴りました。発信元を示すディスプレイには「近藤彩」さん。わたなべクリニック開院時のスタッフで、ご主人の転勤に伴い1年弱で大阪に越していった女性です。
しかし電話口の相手は彼女ではなくご主人でした。一瞬の胸騒ぎ・・・果たしてそれは彼女の訃報を伝えるものでした。インフルエンザが治らないと思っていたのが実は急性白血病で、その獰猛な病魔にあらがいきれず、約1ヶ月で散華したと・・・
確か、昨年3人目のお子さんを産んだばかりのはず、さぞや無念だったでしょう。

彼女はとても綺麗な女性で、すましていれば深窓の令嬢風なのですが、実はバイタリティー溢れるやんちゃな大阪娘でした。フルタイムでクリニックの事務をこなしつつ、手のかかる二人の幼稚園児の面倒をみて、さらに子犬まで世話して・・お菓子作りや手料理には玄人はだしの腕を発揮するかと思いや、休日には旅行にレジャーに日本中を飛び回る。そして特に印象的だったのは、冬場に白衣の上からジャージやジャンパーを着込み、超着膨れ状態でフルフェイスヘルメットをかぶり80CC のスクーターでビュンビュン走り回っていたことです。本来なら「百年の恋も冷める」レベルの姿態なのですが、本人は頓着なく、そのままスーパーや郵便局などへも平然と行っていました。そこが彼女の魅力でもあったような気がします。本当に、「人生、忙しさを楽しんでいまーーす!」という暮らしぶりでした。

非常に優秀な医療事務員であった彼女は、当クリニックを退職する直前、後任スタッフが戸惑わないようにと、数多くのマニュアルを書き残してくれました。まるで、最期を悟った母親が我が子へ託す思いを書き綴るように・・・
そのマニュアルは、今でもクリニックの貴重な財産です。
恐らく今回の急な転帰からすると、お子さん達に「形ある物」を残す時間は無かったでしょう。しかし、彩さんの「斜に構えず、明るく、全力で生きる」という精神は、すでに息子さん娘さんの心の奥に根ざしているはずです。

 
わたなべクリニックが社員旅行に行かれる身分になったら、一緒に大阪USJへ行こう、という約束は果たせなくなりましたが、私たちの心の中にある彩さんの明るい笑顔は、決して消えることはありません。
どうぞ安らかにお眠り下さい。