ゴンザレス

雨上がりの日曜早朝、休日の日課である犬の散歩に出かけました。
8月下旬とは思えぬ強い日差しを避け、遠鉄電車の高架下を歩いていると、前方から初老のご婦人が近づいてきました。

「あら~~かわいいワンちゃん! チワワですよね!」
「あ、はい」 私は見ず知らずの人に話しかけられるのが苦手です。
「ちっちゃいわね〜! まだ赤ちゃん?」
「いえ、12歳ですから、人間ならほぼジジイですね」
「あら、そーなの!でも、かわいらしいね~! 名前は?名前は何て言うの?」

名前はトイといいます。中高生だった娘たちがつけた名前です。
ブラウンの体毛を、「サマーカット」とかゆう手法で短くかられた、ロールケーキ程しかないこの小動物は、たしかに愛くるしく見えることでしょう。
ただそうであればあるほど、日傘を担いだ強面の大男である私とのミスマッチが際立ってしまうのです。それを自覚した上で、ひと目を忍んで散歩している私が、
「トイ(Toy)」などという "メルヘンネーム" を口に出せるはずがありません。


「名前は・・・ゴンザレスです!」
「ゴ、ゴンザレス!? そ~なの!!」 「ゴ・ゴ・ゴンザレスちゃ~~ん!!」

当然、犬はガン無視です。

「じゃーまたねー! 」
ご婦人は、顔を引きつらせながら去っていきました。

 

夏の朝は、まだまだ蒸し暑い!