オレンジページ

「うちにある雑誌って、本当ヘンなのばっかり! どこのクリニックでも『オレンジページ』くらい、置いてありますよ!」(プンプンッ!)

待ち時間が短い、いやほとんど無いことが「売り」だった当院でも、最近はややお待たせすることが増えてきたので、そろそろ待合室の雑誌類を充実させようか、という話題になった折、あるスタッフが愚痴りました。

“どこのクリニックでも”って、どんだけのクリニック巡りをしてきたんじゃい?
と思ったのですが、確かに彼女は医療事務専門卒で、クリニック勤務の友人もいるでしょうから、「どんな雑誌置いてあんの?」という話題が出た際、「オレンジページ比率」が高かったのかもしれません。あるいは、数日前に行った歯科医院にたまたまオレンジページがあり、たまたま興味深い記事が目にとまって印象に残っていたことが、彼女の中で消化され“どこのクリニックでも“となったのかもしれません。

まー、そんなことはどうでもいいのですがで、当時待合室に置かれていたのは、産経新聞、中日新聞、DIME(ターゲットが今イチ明確でない情報誌)、WILL(右曲がりの月刊政治経済誌)だったので、女性が読みたい物がなかったのは事実です。
さらに、ネット検索してみると、オレンジページとやらは、「クリニックに置かれている雑誌ランキング」でなんとNo.1でした。大衆迎合は本意ではないのですが、女性誌にコダワリがあるわけでもなく、可愛いスタッフのリクエストを敢えて袖にする程へそ曲がりではないので、オレンジページとやらを定期購読することにしました。(その際、たまたま目に留まった『本の雑誌』もついでに契約しました)

数日後、初のオレンジページ様が到着・・
ここで、件のスタッフから、再び“どこのクリニックでも”攻撃を受けました。
「どこのクリニックでも、表紙にマジックで医院名を書いていますよ!」

「・・・いや! それはやめておこう」
・・・
「いいかい・・雑誌の表紙にデカデカと医院名を書くのは、結局は“持ち出し”防止策だろ。性善説を振りかざすつもりはないけど、“虚無感”を前面に出している当院で、そんな無粋なまねはできない。 更に言えば、雑誌の表紙っていうのは、その道を極め、かつ厳しい競争に打ち勝ったプロフェッショナルが、文字や写真の大きさ・色合い・レイアウトを綿密に計算して作り上げた渾身の芸術昨品だ。そこに、マジックの殴り書きを加えた上で陳列するという行為は、彼らクリエーターへの冒涜であるのみならず、我々の美的センスの欠落をも露呈させる最低レベルの愚行である。 わかってくれるかな?」


前髪をたくし上げながら顔を上げると、みんな昼食に行って、誰もいませんでした。