あいさつ(その1)

「こんにちは・・・」「ポポポポーーーン」「挨拶するたび友達増えるね!」

いうまでもなく、震災後、テレビで、これでもかというほど流れたACのCMのフレーズです。
ネット上で偶然見かけたのですが、このCMのメッセージが本当かどうか、すなわち「挨拶をすると友達が増えるか」どうかを“実験”した若者がいます。

彼らは大都会のとある駅前に立ち、目の前を慌ただしく行きかう人々に「こんにちは!」と呼びかけ続けました。
そして殆どの通行人に無視され、挙げ句の果てに挙動不審者として警察官に連行され、事情聴取を受けたと・・・
ということで結論が、「挨拶すると警察に連れて行かれる!」

・・・なんと愚かな・・・
彼らは挨拶というものを全く分かっていない。

挨拶とは、ただ単に「おはよー」とか「こんにちは」といった定型句を発すればいいというものではない。
挨拶とは、“コミュニケーション”でなくてはならないのです。

従って、なんの必然性もないシチュエーション、例えば不特定多数の行き交う都会の雑踏で、たまたますれちがった見知らぬ人に、挨拶する必要は全くないのです。
そういった所で、挨拶まがいの文言を発する連中は、
「こんにちは・・(英会話教室に入りませんかー)」、「こんばんは・・(今なら生ビール半額ですよー)」といった一方的な営業的メッセージを発しているだけで、“挨拶”をしているわけではないのです。

一方、たまたますれ違った他人に、挨拶すべき(というか、自然と挨拶が出てきてしまう)場面もあります。
典型的な例は、山道ですれ違う登山客同士です。

「こんにちはー!」
「あー、こんにちは!」
短い、挨拶の交換ですが、そこにはこんなメッセージが込められています

「こんにちはー!」
(この先に滑りやすい所がありますから気を付けて下さいね。ちょっとバテ気味みたいだけど、頂上からの絶景を拝めば、疲れもぶっ飛びますよ!)

「あー、こんにちは!」
(おっ!その様子だと頂上もいい天気なんだね。僕らは退職後の登山デビューなんだけど・・山っていいよね!)

挨拶とは、言葉の交換と同時に、何らかのメッセージのやりとりが可能な関係性においてのみ成立可能なコミュニケーションメソッドなのです。

(長くなりそうなので、続きは次回)