あいさつ(その2)

前回、挨拶とは、単なる定型句の応酬ではなく、有意義なメッセージの交換であるべき、ということを書きました。
雑居ビルのエレベーターで乗り合わせた人に挨拶する必要はありませんが、リゾートホテルで朝食バイキンを終えた後、エレベーターホールですれ違う人には、

「・・ッ、モーニング!」(今朝はワッフルとグレープフルーツがお勧めですよ!)程度に、お愛想するのが、“大人の作法“というものだということです。

私の通っていた高校では、柔道部の下級生部員は、上級生部員の姿を見かけると、とにかく大声量で「押忍(おーーーすッ)」と“挨拶”していました。彼らは、状況にかかわらず、とにかく先方の姿さえ目に入れば、たとえ50 m先の校門付近を歩いている先輩に対してでも、校舎の3階から「押忍(おーーーすッ)」とやっていたのです。
ちなみに、同様のことは、空手部では短く「押忍(おっす!)」、剣道部では「ちぁーーーーす」として行われていました。(勇気ある地学部は剣道部を茶化して「ちガ――――く」と密かにやっていましたが・・・)
武道系の学生は挨拶がしっかりしていると言いますが、これは“挨拶”とは別物の仲間内の“ゲーム”のようなものです。

「押忍!(おす)」
(先輩、昨日の県大会お疲れ様でした。決勝は残念でしたけど、この無念は僕らが必ず晴らしますから・・・今日、時間があったら乱取りお願いします)
「ん!」
(声、ガラガラじゃねーか。昨日は応援ありがとう。今後のことは頼んだぞ。お前は根性があるからきっと強くなるよ。俺もなるべく道場に顔を出すから・・)

真の武道家同士なら、廊下ですれ違った際に交わすこんな挨拶でいいはずです。
実際に発せられた言葉は「おす」「ん」のたった3文字でも、共通の背景と積み上げてきた人間関係があれば、これくらいのメッセージのやりとりは可能なのです。
そしてそれが 挨拶の本質なのだと思います。

わたなべクリニックのスタッフの挨拶

「おはようございます」
(随分元気になられましたね。検査結果も異常なくて、よかったですね)

「こんにちは」
(あ、辛そうですね。初診の方ですよね。早く先生に診てもらいましょう)

をご確認下さい。