「整容」

「整容(せいよう)」という言葉があるようです。先日介護関係の書類を読んでいて初めて知りました。読んで字のごとく「容姿を整える」という意味だそうです。

しかしこの言葉は「・・凛子は念入りに整容して夜の街に消えていった・・」といった具合に小説内に登場することはありません。

「身繕い」や「化粧」がゼロからプラスへの自発的な変貌であるとすれば、「整容」はマイナスから(せいぜい)ゼロへの回帰、しかも殆どの場合、他人の手によってなされる事務的な行為だからです。

衣服などの破れた個所を補修するという意味の「繕う」という字を使う「身繕い」の慎ましさ、敢えて「化ける」と表現する「化粧」の謙虚さ、こういった思慮深い日本語の趣が「整容」には全く感じられません。

「整容」・・決して声に出して読みたくない日本語。介護関連書類の中だけに籠もっていてほしいものです。

「・・えーとっ、次はBさんの整容かッ・・」・・これは絶対なしです。