曽野綾子と伊達直人

本日の産経新聞に作家の曽野綾子さんが、「タイガーマスク現象」と呼ばれる名前のない人の善行についてのエッセイを寄せています。「小さな親切、大きなお世話~~ほんものの誠実」・・・題目から分かるとおり、この現象に好意的な文章ではありません。

私もかねがね「伊達直人(タイガーマスク)っていいよね!」という話題に接するたび、もやっとした違和感を禁じ得ませんでした。その違和感の本質が何なのかをうまく説明できずにいたのですが・・・さすが曽野綾子先生。この文章を読んでモヤモヤが晴れました。

<すべての人に尽くすには、地味な「継続」がいる。一度だけ思いついていいことをするのは、その人の一時の楽しみに過ぎない。>
さらに曽野先生は、物を送るのは易しいが、それを必要としている人に届ける作業は難しいと指摘した後、日本から途上国に出向いた人道的団体の代表が、現地の重病患者の手をずっと握っていたという「美談」を引き合いに出してこう言います
<過去に長い間、私は病気や貧困から抜け出られない人と日常を共にしている医師やシスターたちを見てきた。その人たちは病人の手を長く握っているような人情的な光景を見せることは希であった。彼らは長い年月継続して、日々日常、大局的にそれらの人たちの命を支える働きをしていたから、いつも忙しくて、ずっと一人の手を握っているような暇はなかったのである。・・・中略・・・命がけのほんものの誠実は、多分外部には見えない行為なのだ。>

人情的なパフォーマンスではなく、地味で継続的な誠実さが大事なのですね。肝に銘じて診療にあたりたいと思います。
曽野先生。長生きして、いつまでも我々を感化し続けて下さい。